2015 12 26
スタッフブログ
井上雄彦さんの漫画「リアル」を読んだことがあるなら、
実際に体育館やテニスコートで車いすスポーツを見たことがあるなら、
パワーや、スピードや、高度なテクニックを我が物にすることがいかに大変なことなのか分かります。
国枝慎吾と上地結衣。
日本が世界に誇る車いすテニスの二人のチャンピオン。
二人がこの1年、もがき苦しみ、何を思い、何を成し遂げてきたのか。
この1年彼らの戦う姿を必死で追い続け、その一コマ一コマを丁寧に紡いで、ようやく一つの作品が仕上がりました。。
男子車いすテニス界の絶対王者、国枝慎吾選手。
グランドスラムでシングルス、ダブルスの優勝は歴代最多の39回。
テニス界のレジェンド、フェデラーさえも「日本にはシンゴ・クニエダがいるじゃないか」と
彼の偉業を讃えます。
世界最強になった今も決して現状に満足せず、さらなる高みを目指すこの1年を見つめ続けることで、
番組ディレクターとしての自分自身も本当に多くのものを学びました。
ここ数年、国枝選手と車いすテニスの大会を取材していて痛感すること。
それは、国枝選手が誰よりも練習する、ということです。
「俺は最強だ」
国枝選手のラケットにはこの言葉を書いたテープが貼ってあります。
その言葉通り、誰よりも強い国枝選手ですが、それでもいつもひたむきに練習に励みます。
5月に福岡で行われたジャパンオープンの時は、試合直後そのまま練習コートに行き、
黙々とサーブを打ち込んでいました。
ただし、その練習内容はいたって地味。基本練習を黙々と繰り返すのです。
かつて「同じショットを3万球打ち込んだ」という話も聞いたことがあります。
「最強」を支える、世界一の練習。
2016年はパラリンピックイヤーとなりますが、リオでのシングルス3連覇は当然のこと、
36歳で迎える2020東京パラリンピックでの4連覇まで視野に入れる国枝選手の、
絶対的な自信は、
世界一の練習から得られていることは間違いありません。
いっぽうの主役である上地結衣選手は、2014年当時20歳でグランドスラム4大会すべてのダブルスで優勝。
シングルスでも全仏と全米を制し、世界ランキング1位という頂点に上りつめました。
しかし21歳となった2015年は一転、苦悩の年となりました。
それは2016リオデジャネイロパラリンピックを見据え、
新たなステップアップを図ろうとしていたがゆえの苦悩でした。
再び挑戦者となった上地選手の1年にも密着し続けました。
よく聞く音楽を尋ねると、ケツメイシ、BIGBANG、globeと、21歳らしい答えが返ってくる反面、
好きなタイプの男性はと聞くと、舘ひろし、岩城滉一、石黒賢とこっそり教えてくれました。
2015年のウィンブルドンで優勝した後、僕のところに来て、恥ずかしそうにこう言ってきました。
「優勝のご褒美に石黒賢さんと写真を撮りたいんですけど…」
(石黒賢さんはWOWOWウィンブルドン中継のメインキャスターでした)
21歳の女性らしいとてもチャーミングな一面をのぞかせてくれます。
僕自身はもちろんのこと、スタッフ皆が上地選手の笑顔のファンです。オフコートではいつも笑顔です。
でも2015年シーズン、コート上ではなかなかこの笑顔を見ることはできませんでした。
新たな技の習得に励む一方で、結果がついてこず、勝っても負けてもなにやらブツブツブツブツ…
「世界ランキング1位」のプレッシャーを受け止めながら、
それでも前を向いて進んでいく姿にコーチはこう言います。
「あいつの長所は負けず嫌いなとこ」。
目標とする2016年リオパラリンピックでのメダル獲得、それを成し得た時、
コート上で大輪の笑顔を咲かせてくれることを願いながらこれからも取材を続けたいと思っています。
「国枝・上地 それぞれの世界挑戦2016」
2016年1月1日(金・祝)午後3:00~ WOWOWプライムでの放送です。
二人の素晴らしいアスリートの生き様と、そして車いすテニスという競技の奥深さを、少しでも
多くの人に知ってもらいたいと切に願って制作しました。
入魂の作品です。
皆さんぜひご覧ください!